はじめに− 21世紀の日米関係に向けて

日本代表 伊部 正信

冷戦が終結し四半世紀余りが過ぎましたが、世界は歴史的変革期を迎えています。この間、中国は経済的に著しく台頭し、2010年にはGDPで日本を抜き、世界第2位の経済大国になりましたが、その一方で米ソ2極体制の崩壊により生じた間隙を縫うかのように、軍事力を急速に増強させ、今や米国に次ぐ第2位の軍事大国になっています。

こうした中、日米両国は世界平和の維持と国際秩序の安定を図るため、グローバルな視座に立ってパートナーシップを組み、両国の立場と役割を認識しながら、新しい国際システムを構築していく重大な責任があります。とりわけ日本を取り巻く安全保障環境が急速に変化する中、日本は安全保障上の役割を自ら果たし、米国と共にアジア太平洋地域における平和と安定を維持していかなければなりません。

また、日本は二国間、多国間の自由貿易協定や経済連携協定を締結し、諸外国とりわけアジア新興国の経済活力を日本の再生や経済成長に積極的に取り込む必要があります。アベノミクスの第一、第二の矢の推進とオリンピックの東京招致決定により、日本経済はようやく回復の兆しを見せ始め、失われた20年とまで言われたこれまでの沈滞ムードや閉塞感は一掃されたかのようです。

こうした市場ムードの好転は、日本経済を成長軌道に乗せ、社会を再浮上させるための千載一遇の機会として捉え、何としてもアベノミクス第三の矢である成長戦略を実行し、政府規制の緩和、撤廃、市場開放の推進などにより、市場メカニズムに基づく自由競争を促進し、日本経済を成長軌道に乗せていかなければなりません。

競争は新たな活力を生み出し、経済活動を活性化させます。生産性が低く、高コスト構造を温存させる企業は、事業の縮小や撤退を余儀なくされますが、創意工夫により商品、サービスの高付加価値化、低価格化を実現させる企業や、創造的な発想で新技術や新商品を開発するベンチャービジネスなどが成長し、新たな雇用も創出することでしょう。

このように、規制改革や構造改革を推進することにより、21世紀の日本を国内的にも対外的にも開かれた社会として再構築していくことが必要不可欠なのです。

また「官から民へ」、「中央から地方へ」の理念のもと行政改革を推進し、もはや地方分権というよりはむしろ、道州制の導入を含め大胆に地方主権を確立していくことが肝要です。同時に規制の撤廃により、民間の活力を最大限に活用し、生産者偏重の政策や制度を消費者、生活者重視の政策体系に移行していくことなど、日本は今、新たな創業を必要としているのです。

こうした状況の中で、日米関係の再構築を考えるとき、両国政府間ベースの外交関係だけではなく、改めて民間ベースの草の根的国際交流の重要性に着目せざるを得ません。各界、各層の日米両国民が、両国の政治や経済、社会、文化などに対する知識を深め、相手国に対する思いやりと理性を失わずに、両国の現状や問題の背景、実態を理解し、相互に啓発、触発しながら、健全な競争と協力関係に支えられたパートナーシップを構築していくことが必要となります。

このような日米両国民の草の根レベルにおける幅広い相互理解や相互協力が促進されてこそ、両国民間に生起するさまざまな難題を克服し、日米友好関係を長期的に維持、発展させるための強固な基盤が形成されるのです。

日米文化センターは以上のような視点に立ち、日米両国民の相互理解と信頼、および友好親善を深めるためアメリカの首府ワシントンD.C.に設立された米国の公益法人で、ワシントンと東京を拠点に各種の日米交流事業、教育研修プログラムを実施しています。

今、ワシントンD.C.で

アメリカの首府ワシントンD.C.には、大統領府をはじめアメリカ議会、国務省、商務省など米国の立法、司法、行政機構のほか、IMF、世界銀行などの国際機関が集中しており、米国内だけではなく、世界の政治・経済の中心になっています。

ワシントンにおける政策決定は米国民の経済社会生活に決定的な影響を与え、ニューヨークの金融や商業活動の動向も、デトロイトの自動車工場の盛衰も、ワシントンで策定される金融財政政策や産業貿易政策によって大きく左右されます。今やワシントンからの情報や政策がビジネスや教育、文化の動向までも決定すると言って過言ではありません。

さらにワシントンには、連邦政府の機関だけでなく、州政府や地方政府の全国組織はもとより、全米自動車工業会のように製造業や卸・小売業などの各業界団体、労働組合、消費者・環境保護団体、教育専門団体、シンクタンクに至るまで、あらゆる分野の団体・組織の本部機構が集中しています。こうした本部機構は連日、議会、政府、マスコミなどに政策提言やロビー活動を行っており、ワシントンは、米国内外への情報発信源として重要な役割を担っています。

また、日本大使館はもとより、日本の新聞、テレビなど報道機関のワシントン支局以外にも、日本銀行や商社・メーカーなどの日本企業が情報収集活動を主目的にワシントンに事務所を開設し、日米関係にとってワシントンの重要性は高まっています。

米国は航空路線・運賃の自由化や、放送と通信の兼業認可など、運輸、通信、金融、エネルギーなどあらゆる分野で規制の緩和、撤廃を推進してきました。自由競争の促進は新たなビジネスチャンスを生み出し、新しい産業の誕生やベンチャー企業の成長などにより米国経済を活性化し、新たな雇用も創出してきました。かつて低迷を続けたアメリカ経済はワシントンで策定される政策に呼応して、これまでの市場を根本から塗り換えつつ、見事に復活を果たし、IT革命やバイオ革命を基軸とした経済成長を長期にわたり持続させました。未だ閉塞状況から脱却できずにいる日本にとって、このアメリカの再生から学べるものは決して少なくありません。

日本は今、行政改革、規制の緩和・撤廃、市場解放などを通じて、経済、産業社会の構造的変革をはかり、長期にわたる不況を克服し、新規産業の育成、新たな雇用の創出などをはかることが求められています。日本を再生させ、活路を切り拓いていくためには、IT革命やバイオ革命に象徴されるアメリカの変身を謙虚に学び取る必要があるでしょう。

これは日本の政府や企業に限らず、生活者であり、消費者である日本人一人一人にも言えることで、情報の宝庫とも言えるワシントンD.C.で時代の先端を体感することは、今後のビジネスや教育・文化活動などあらゆる分野において、自らの大きな糧になるはずです。